命の価値

24時間いつでも窓を開ければうるさい。

車はクラクションを鳴らしまくり、誰かしらが叫び、真夜中まで工事現場を照らす発電機は、ある大きさ以下の音を全て打ち消す。母親の胎にいるのはこのような感じなのだろうと思う。濃度の高いノイズの表面深く沈んでいるような感覚…

 

真夜中にふと寂しくなるような時がある。そういう時にはまず窓を開ける。
宇宙から見れば優雅に、滑らかに動く景色なのかもしれないけれど、その場に立てば世界は地響きを立てて変化している事がわかるところがある。

ここだ。

こんな夜中まで発電機が動いてる事が何よりの証拠だ。
要求なきところにポテンシャルなし。であるがゆえに、東南アジアは今はどこも軒並み景気が良い。その中でもフィリピンは特別。

超ざっくり言えば made by キリスト教なアンチ避妊スタンスがメインストリームだから。国のカルチャーとして「ゴムつけるな」と。お陰で ASEAN の中でも未だに図抜けて高い出生率を誇る。

 

 

ちなみに1984年前後、出生率という通常やや固めな指数がイビツに膨れるグラフを象徴するように上映されたのが、カンボジアの内戦をテーマとした映画「キリングフィールド」で、控えめに考えても膨らんでる分の何割かは戦場レイプによる被害であるとしか思えないのだが、この数字こそ紛れも無い国を表す指数の内、最も強力な意味を持つ指数のひとつであると思う。

話を元にもどそう。出生率の低下による国力減衰を憂慮するならば、最も有効な手段は避妊の違法化だ。やるなら産めという力強いサイン。そういうサインをもってる国は強い。だからフィリピンは特別。今日言うの2回目だからリズムだけでも覚えていってね。まあ日本もああいうことができればいいんだけど…積み重ねた常識はもはや飽和寸前で余計なパワーをつかっている余裕はないのが現実だと思われる。

件の俺の彼女もパターンには漏れず、日本人との間に一人、フィリピン人との間に一人、子供がいる。もちろん両方とも彼女が引き取っている。ここには書けないようなエグい背景もあるので「他の方法もあったのでは?」と聞くと「勿体無い」と一言。たまげた。日本人が失った生命力はこういうところじゃねえのと、こういうことを聞く度に思う。

ベトナムのコーヒー

金曜の夜、日本からきていた友達と遊んだ。屋台で BBQ をアテにビールを何本か飲み、それじゃということで71グラマシーへ。入り口で「入りたいならボックスシートにしろ」と言われる。金額を尋ねると「ボックスシートはボトル2本買う必要がある。1万ペソだ」と。いくら金曜の夜だからっていってクラブに入るのに日本円にして3万円弱。

マニラの景気の良さを痛感するとともに、日本の円安に不安を感じる。東南アジアでこんな思いをするようになるとは。円高の神様に祈りを捧げつつ KTV へ。

ここは彼女が以前働いていた店で、勝手知ったるなんとやらなところ。息を吸う様に酒を飲む俺と彼女。連れの友達はほとんど飲めないのでアイスティー。

なんか酔っ払うのが早いなと思って彼女の動きを見ていたら、焼酎にカラマンシーを絞るだけだった。水割りだって言ってるし、彼女もそれは理解してるんだけど、とりあえず面白いから飲ませてやれみたいなトーン。嫌いじゃないので付き合ったら途中から段々と記憶が薄れて…

気がつけば1本半を飲み干していた。お店の営業が終了したので、その足でタイムへ。

ここで簡単に説明しておくと、71グラマシーもタイムもクラブ。ただ、地上71階建ての超高層コンドミニアムの最上階に、ルーフトップなラウンジを持つ71グラマシーは基本的に全てが高額。客層も大概が金融系か投資家。たまに石油王みたいなナリをした中東系のおっさんなんかも見かける。ここにくればマカティが金融都市であり、金持ちのために作られた街だということを体感できる。

一方タイムは路面店のいわゆる普通のクラブだ。ただし、ローカルは全体の2割程度しかいない。地理的な理由が主だろうけど、このクラブでは歌ものをかけることが少ない。フィリピンにおけるクラブってのはいわゆるディスコで、歌ものが中心になっている。それはそれで悪くはないんだけど、さすがに何回か行けば飽きてしまう。ローカルの連中は飽きもせずにニッキーミナージュとかで踊ってるけど。

そういう関係にあるグラマシーからタイムへ。もちろんタイムにはボックスシートを買えと要求する黒服もいない。今夜も欧米人ばかりなのに結構パツパツ。だけど東南アジアのクラブにくる欧米人てのは大体が野暮ったいやつがおおくて、ここタイムでも靴の裏についたガムでもとってんじゃねえかってくらい動きがいけてない奴が多い。なんだったら腕くんでじっとしてる奴もいる。お前はラーメン屋の店主か。

あんま他人の文句ばっか言っても、俺もそれほど動けるわけじゃないからこれくらいにして、朝まで踊った。気がつけば自分のメッドの上で目が覚める。タイムに入ったくらいで記憶が完全に失われていて、ところどころ数秒程度、断片的にフラッシュバックする部分もあるけど、大体思い出せない。思い出せなくとも帰ることはできる。鮭のような自分の帰巣本能に感謝しつつ、ベトナムで買ったコーヒーを飲んでいる。

すぐぐしょぐしょに濡れる時期

マニラは本格的な雨季。毎日遠慮というものを知らないかのように節操無く豪雨が降り注ぐ。この勢いは雨季が深まるにつれ激しさを増し、クライマックスで大量の台風にクラスチェンジする。大自然のダイナミックさをビシバシ感じられる機会なので嫌いじゃないんだけど、飛行機がカジュアルに欠航するし、そこらじゅうグチャグチャになるからきれいな服も着れないし、アッパーな事やるにはちょっと不便な季節。

こんなときは真っ白に染まった空に光る雷を眺めながらビールを煽ったりするのが一番。

無題

マニラから北東に車で40分ほどにあるアンティポロに行ってきた。外国人はめったに見かけないようなローカルエリアで、往来で iPhone を取り出すのがはばかられるようなところ。

距離感で言えば品川から横浜くらいなのに、ジプニーで乗り合いワンボックスの乗り場まで向かい、乗り合いワンボックスを1回乗り換え、さらにジプニーに乗り直した後に止めのトライシクルで目的地に到着するという、交通網が発展しまくった首都圏で生まれ育った身にとってはディズニーランド一周するのに等しいだるさがあるので迷わずタクシーを選択。40分と言ってもおよそ400php。なんだけどこれがまた死ぬほどつかまらない。マニラでは都市をまたぐ移動が非常に不便で、相当遠くまで移動するならば高速バスでそれなりに快適に移動できるんだけど、都内から横浜くらいの距離感が一番つらい。タクシーは捕まらないし、一発で目的地にいけるようなアプローチが存在しない。

20分位粘ったけどもうジャパンマネーに物を言わせて上積み300phpの合計700phpをオファーして無事にタクシーをゲット。一路アンティポロへ。

普段ならばタクシーで寝るなんてマニラじゃ自殺方法の一種なんだけど、こういうケースは別。謎の頑張りを見せる運転手によって幾度かのミスもフォローされ無事に目的地に到着。さくっと用事を終わらせて一路マニラへ。

帰りは行きと違ってローカル相手のタクシーばかりなんで、単価の高い遠距離オファーは割合通りやすい。しかしそこはマニラ。夕方の尋常じゃない渋滞に巻き込まれて40分の道のりがなんと2時間。運転手は事ある毎に2時間もかかっていることをぼやき、涙を誘って少しでも料金が上積みされることを期待してる。

こちらも鬼ではないので400phpのところを500phpでお釣りはもらわず降車。昼飯を食って1時間程してから出発したのに時間は既に21時過ぎ。カジュアルに一日が潰れた。

食文化

ひさしぶりに書いている。先週末まで1ヶ月ほどハノイに滞在していたんだけど、尋常じゃないくらいに忙しくて大した観光もできず当て付けのようにローカルフードを食いまくる毎日。ベトナムのローカルレストランは大量の米を盛りつけるのがデフォルトで、大体マニラの倍は盛りつけてくる。それでおかずを3,4品選ぶんだけど、大体何を食ってもうまいし安いし、ついつい毎食白飯をガッツリ食ってしまったりして、それでいて仕事が忙しいから借りてたサービスアパートメントに篭もりきりだったから「こりゃ相当太ったな」と思っていたけれど、帰ってきて体重を測ってみたら2キロほどしか太っていなかった。ベトナム人がみんな細くてスタイルがいいのは、あんだけ食っても太らないメシなんだなと実感。

ベトナムと言えばフォーってのがスタンダードな意見だと思うけど、似たような構成の麺類は相当色々あって、中にはまぜそばみたいなものまである。大体なんでも特徴的なうまさがあるから適当にローテーションしてても飽きることはほとんどない。

マニラだと1ヶ月も自炊なしで暮らしてたら、血管に油が詰まって死ぬか、一周して毎食フライドチキンを食うようになったりするんだよな。大体ケンタにフライドチキンを乗せたどんぶり飯があるような国だからな。それでもハノイからマニラに戻った翌朝、久しぶりに食べたジョリビーは心なしか懐かしい、ほっとするような味がした。悔しいけど。

作業場所としてのハノイ

最近非常に忙しい。わかってて請けてるから改めて言うのも烏滸がましい話。
今はベトナムのハノイで借りたマンスリーマンションに篭って仕事をしている。もちろん用があるから居るのだけど、毎日用があるわけじゃなく、平時はマンションに缶詰になって作業をしている。

ハノイは良くも悪くも田舎的で、旧市街の方まで出向けば遊ぶ場所もあるのだけど、俺が住んでいる辺りには何もない。いや、あるのかもしれないけど、探索はしていない。

食い物もそうだ。近所にはコンビニなんてないし、マンスリーマンションにはおまけ程度のキッチンはあるけど、調理器具も食器もない。食い物屋は大体23時にはどこも閉まる。

田舎に合宿にきたかのようなこの状況を活かして今の忙しさを乗り切りたい。これを乗り切れば後半戦は楽になるだろう。

籠城

ここのところ忙しくて日曜だというのに、海外にきているというのにホテルにこもって仕事をしている。俺は自分を仕事モードにするために「音楽をかけたら仕事に集中する」という自己暗示をかけていて、スピーカーを持ち歩いていないからイヤホンで音楽を聴きながら仕事をしたいのだけど、部屋を掃除にくるスタッフのインターホンに気づかないのではないかという不安がイヤホンをつけさせない。つけても外部の音が気になって集中出来ない。

部屋に設置されたゴミ箱は既に満杯で、このまま一晩無事に過ごせるとは思えない。でもそんなことに気を取られていて仕事が進まないのは本末転倒なわけで、とりあえず夕方くらいまで掃除のことは忘れて音楽をかけて仕事に集中し、滞在しているホテルの裏手にある、日本人向けのちょっと高めなホテルにあった銭湯に入りに行こう。その時までに掃除がされなかったら、銭湯に向かうときにフロントに頼めばいい。

普段マニラだと健康センターのような施設で2,400円も払わなければ湯船につかることができないのだけど、さすがハノイは違う。500円だ。残りの1,900円で何をしよう。いや、違う。まずは仕事だ。