集団でことにあたる姿勢について

俺の仕事環境はこれまで「専門分野を持つ個人かそれに近い小規模な組織が集まり、個々の受託案件にフィットした集団を構成し、各人がそれぞれの得意分野にコミットして納品する」というアプローチをとっていたんだけど、今回の件で「口がうまいけど何一つできないやつ」が紛れ込むリスクについて学んだ。学んだというか、もうこの方法に懲りたと言ってもいい。

フリーでやってる人間なんて、誤解を恐れずに言えば半分以上はそうせざるを得ないような連中で、さらにその半分はパフォーマンス的な問題で一般の企業には務められないような連中なのだけど、そういう連中に限って見せるのがうまいもんだから成果物を見るまではわかんなかったりする。なので練習試合みたいな小規模案件で成果物だとか仕事のやり方みたいなものを見てから大丈夫かどうかを判断する必要がある。

そんなことはこの10年ウェブ開発の受託制作をやってきた経験によって痛いほどわかってたんだけど、今回は俺に直接的な決定権があるわけじゃなかったという点と、気づいた時にはもうそうせざるを得ない状況だったという点が致命的。あの時点で運ゲーになってしまった。そしてくじ引きに負けた。離陸の瞬間に胴体着陸させなければならないことが確定するようなもの。

今回痛感したのは、事前にパフォーマンスを測る機会を得られないままに大規模案件に投入せざるを得ない状況が発生しうるということと、それによって被る被害も避けられない(責任をとらなければならない)ということ。一回の技術者にはリスクがでかすぎる。イベント発生の条件が成立すると避けられないというのは、もうそのイベントが発生する条件を成立させない選択をとっていくしか無いんだけど、それってつまり「対応可能であることが担保できる状況」なわけで、今のアプローチは集団と言えど資本的な関係は無いので手のひらを返されても文句は言えない。

つまり、結局は最悪自分が対応できる範囲のことしか請けないという、これまでと同じ選択になるという。一人で10年近くやってきて「これからのはたらきかた」みたいなもんを真剣に考えて模索してきたつもりだったけど、結局は「どうはたらくか」じゃなくて「誰とはたらくか」なんだってことを再認識した。

「会社員なんてのは会社に守られて責任感も欠如してる」なんて昔は思ったこともあったけど、実際はそうじゃない。平均すれば会社に勤める人の方が仕事に対する責任感が強い。これは組織の中での評価だとか色々な要因はあるだろうけど、やっぱり集団の中で個としてパフォーマンスを出していくって考えた場合に重要なのは職責をきっちり果たすことに尽きるから、会社組織の中でまじめにやってる人は職責を果たすことをきちんと意識してる。

逆に個人でやっててダメなパターンだと、口八丁手八丁で自ら負うべき職責をあたかも自分には関係の無いことのように主張するようになる。これが今回最悪だなと思ったパターン。明らかに能力が足りてないと思ったから好意でサポートしたのに、ちょっとでも手をだすと次からは「そこは○○さんにやってもらったとこなので、以降は○○さんに依頼してください」とかしれっと言い出してくる。俺はあくまでもお前に対して好意でサポートしてるだけなんだから、お前が受け入れから何から責任もって対応して自分の成果物として管理しろやクソがって喉元まで出かかったけど、ニッコリ笑って「了解でーす」と受け入れるしかない。そこで拒否してもちゃんと責任もって対応しないだけだし。

結局、責任放棄の機会を与えたことが根本的な原因だと思ったので後半は「ここはサポートするけど事後は自分の成果物として責任持って対応してください」と毎回付け加えるようにした。俺の中では仕事仲間っつーのは背中を預けて戦う仲間なわけで、いちいち責任範囲がどうたらって言いたくはないし、そんなことを言わないとダメな連中に背中預けるなんてそもそも無理。ということで俺がイメージしてた「個人が力を合わせてでかい仕事をする」ってのは相当難しいことがわかった。少なくともちゃんとやれる仲間をもっと見つけないとダメだと思った。

その点で言えば、今回は相当ヤバイ連中が集まってしまったけど、全員がそういうわけではなく、ちゃんとやってくれる人もいた。まさしく僥倖。後はリスクヘッジの仕方だけもっとしっかり練っておかないと、今回は俺自身が責任を問われるような動き方をしていなかったから責任を問われるようなことはないんだけど、立ち位置に起因して責任が問われかねないということも理解した。俺の場合はそもそもとしてそういう位置に立たなければならない理由もないから立つつもりはないけど、うっかり欲をかけばそういうリスクも受け入れることになるので注意していきたい。