汚れたテーブル

賃貸契約が満期とのことで更新しにいった。駅から歩いて15分ほどの管理会社は街の不動産といった佇まいで、二代目らしきおっさんと同じくらいにくたびれた事務所に通された。おっさんは俺に籐で編んだこ汚い椅子を指し、そこへ座って待てと促す。椅子の目の前には10年くらい洗っていないんじゃないかと思われる非常に汚い布が被せられたこぢんまりとしたテーブルがある。おそらくそこで契約延長を締結するのだろう。身が引き締まる思いに駆られそうになったが、目の前の汚い布のせいで強引に現実に引き戻される。

「まて、そんなに緊張する程の状況じゃないぞ」と。

事務所内にはおっさんと、おっさんの母親らしき女性とおっさんの父親らしき男性。女性はおっさんに「社長、応対お願いします」と依頼されるとおもむろに俺が座る椅子の方に来て契約書の確認と記名を求めてきた。久しぶりに挨拶するのだし、仲良くなっておいて損はないという極めて打算的な思惑によって選んだ最中を手土産に差し出すとそれまで若干好戦的なオーラが見えていた女性から殺気が薄れ、えいやその隙にと思って挨拶をした。よかった。

事務所を出るとき、おっさんと女性は「ありがとうございます」とお辞儀をして見送ってくれたのだが、父親らしきおっさんは終始無言。なにか嫌なことでもあったのだろうか、客商売の辛さがなんとなく感じられる雰囲気を醸し出している。